ブックサーチ6
   
   電子図書館:著作権をめぐる一つの提案                                                                       

                       『コピライト』 466号 2000年                                                         
   

現行の著作権制度においては図書館に対して権利制限条項(31条)がある。だが、この条項は電子図書館に対してはまったく役に立たない。むしろ電子図書館の構築を妨げる規定となっている。なぜならば、上記31条は解釈として、第一にユーザーに対してオンラインのサービスを許さず、第二に図書館自身に対して所蔵著作物のデジタル化を許さず、第三に図書館相互貸借業務に対してオンライン化を許さないからである。どうしたらこの束縛から脱出できるのか。一つの提案を示したい。
 結論をまず示そう。電子図書館を有償化する。これで著作権法の拘束と妥協できる。これは名目的には図書館の公共性を棄てることになる。なぜならば図書館法によれば公立図書館には無償規定があり(17条)、この原則と衝突するためである(ただし、国会図書館と私立図書館にはこの条件はない)。
 ただし、この妥協によって電子図書館は窓口におけるサービス料金をかぎりなく無料に近づけることができる。これは現行著作権法の拡大解釈によって著作権料を迂回徴収できるからである。
 電子図書館には電子化著作物と電子的著作物が所蔵される。前者は最初に冊子体がありこれを電子メディアに変換したもの(たとえば、古典のCD-ROM)、また後者は最初から電子的メディアに記録された著作物(たとえば、ウェブ上の電子ジャーナル)である。ここで双方をまとめて「デジタル型著作物」と定義しておく。
 出版物の定義は国会図書館法にある(24条)。それは通常の著作物、映画著作物、録音著作物等に加えて「機械的又は化学的方法によって、文書又は図画として複製した著作物」までを含むとしている。この定義にデジタル型著作物までを含めて理解することは難しい。  ここで発想を転換する。電子図書館の所蔵するデジタル型著作物に対して、これを著作権法30条2 項が規定するデジタル録音・録画機器によって記録される著作物に相当するという再定義をする。
 この再定義によって、デジタル型著作物の私的使用に対する補償金制度を電子図書館サービスにも適用できることになる。つまり、デジタル型出版物に対するブラウジング用端末について、デジタル録音・録画機器に対する補償金をかける。ユーザーがこれを購入するときに、この補償金を上乗せした金額を端末価格として支払う。この補償金は端末メーカー経由著作権の権利者団体に支払われる。
 ユーザーは電子図書館へ自由にアクセスし、その所蔵するデジタル型出版物を自由に検索し、自由にダウンロードできる。このとき、とくにサービス料金は支払わない。著作権料は補償金としてすでに支払い済になっているためである。図書館は著作物のアクセス履歴を集約し、これを著作権管理団体へ報告する。著作権管理団体はこの記録にもとづいて補償金を分配する。
 図書館用端末についてはアクセス用に特別のプロトコルを制定し、それをROM に焼きこんだユニットを既存のパソコンに装着できるようにする。このROM に補償金をかける。このようにすれば既存の端末所有者からも補償金を徴収できる。このユニットは年間百万台のオーダーで出荷されるだろうから1台あたりの補償金はごく僅かでよいはずである。
 加えるに、電子図書館はみずからが保有するデジタル著作物の全ページに電子すかしを入れておき、これでユーザーがダウンロードした出力を営利的に再利用することを抑制する。制度的には技術的保護手段回避に対する禁止条項(102 条の2 )を拡張して電子すかしの抑止効果を支える。
 デジタル型出版物は在来の冊子体の著作物と比較して保管についてきわめて脆弱かつ不安定である。したがって、デジタル型出版物の保管とカタログ化を確実に実施するための施設が社会的には必須となる。このような施設が存在しなければ、デジタル型著作物は中長期的には管理不能となり散逸してしまう。この役割を電子図書館が果たすことにする。この役割を著作者や出版社は歓迎するはずであり、電子図書館はかれらに対してバーゲニング・パワーをもつことができる。
 最後に残された障害は31条に対する現在の解釈である。これは図書館が所蔵出版物を電子的に複製することを禁じるものである。この点については解釈を改める必要がある。

   
    名和小太郎   グーグル論(6)  
                                                トップペ−ジへ   「グーグル論」リストへ